黒瀬は考え込むように黙った。
静奈を雇ってくれそうな職場がなかったか、と記憶をたどっていたわけではない。
自分の意志確認していた。そしてその意志は、割とすぐに固まった。
──後で思えば、この判断こそが最初にして最大の間違いであったというのに。
「……一つ、心当たりがあります」
「え?嘘、あるんですか?」
「そこまで給料は高くないですけど。ああ、でも食事は三食付きます。あと住居も……こちらは嫌でなければになりますが」
「へ?何ですかそれ最高じゃないですか」
黒瀬はポケットからメモ帳を取り出し、ペンを走らせる。そのページを丁寧に破り、静奈に渡しながら言った。
「業務内容は、簡単に言えば『探偵助手』です。あとは……そうですね、依頼がないときは適宜休暇という形にしましょうか」
「ん?まさかその職場って……」
「こちらが事務所の住所と電話番号です。ここからは電車とタクシーで三時間といったところですね。気持ちが決まったら連絡ください」



