元探偵助手、転生先の異世界で令嬢探偵になる。




「このナイフが、この方の持っていたナイフですね?汚れ一つなくピカピカしてますし、少なくともこのナイフで殺したわけではないですね。被害者の体に傷もありませんし」

「そうだろうな。どう見たって凶器はこのロープだ。殺すための道具をいくつも持っていたって何もおかしくないだろう。わかったらそろそろ……」

「つまりあなたは、この店員はこの方に首を絞めて殺されたと考えているわけですね」

「……ああ、それしかないだろう」



 一向に立ち去る気配を見せない上、当然のことを聞くシエラに、衛兵の苛立ちが最高潮に達しようとしている。


 シエラはふうっと息を吐た。

 黒瀬はこういう時、どんな態度をとっていただろう。

 あくまで落ち着いた口調で、それでいて簡単なことに気が付いていないことへの非難を少しにじませて。きっとこんな風に言う。



「ですがそれもおかしいですねぇ。普通他人に首を絞められれば、ロープを首から外そうと抵抗して首にひっかき傷ができると思いませんか?ですがこの店員の首にはロープの跡以外ありません。自ら首をつった、と考えるのが自然に思えますが」