どうせ大して生きることができないから助けたのは無駄だった?そんなはずがない。
黒瀬が静奈の命と引き換えにするのに値する人物であるのか……など、そこまで考えていたわけがない。
ただ単に静奈は──
「私は、黒瀬さんのことが好きだったから……大好きだったから、思わず自分を犠牲にして助けてしまったんです」
目から、大粒の涙がぽろりとこぼれる。
「たとえ黒瀬さんが長くは生きられないことを知っていたとしても、私は、静奈は絶対に同じことをします!」
「……」
「目の前で大好きな人が殺されそうになってるのに、黙って見てるなんてできるわけが……」
口を押さえられた。
ルシウスはこちらを見ないまま、細くしなやかな手でシエラの口を塞いでいた。
「命をかけるなんてことを簡単に言えるのは、残された側ではないからですよ」
「っ、それは……」
「静奈くんが死んだ後、俺がいったいどんな思いで……!」