元探偵助手、転生先の異世界で令嬢探偵になる。




 この店はどうやら宝石店らしい。掃除の行き届いた店内にきらびやかな宝石が並んでいる。

 そして被害者を見れば、目につくのは首に巻き付いていたロープの跡。他の部分に目立った傷はない。

 それから衛兵が拘束している男。黒服で、そのすぐそばに大きな鞄といくつかのナイフが放り出されている。



「そちらの方、疑われているのですか?」



 シエラは特に迷うこともなく強面の衛兵に尋ねた。

 前世で静奈は、黒瀬と共に事件現場に遭遇した際、こうして顔なじみの警察に事件のことについて好き勝手質問をしていた。被害者についての情報や死亡推定時刻、関係者の証言についてなど色々と。

 一般市民に過ぎない黒瀬と静奈が現場を荒らすことを警察はもちろん良しとしなかった。だが、警察だけでは解決できなかった事件を黒瀬がいくつも解決したという実績があったため、彼らは苦々しい顔をしながらもいつも質問には答えてくれた。