元探偵助手、転生先の異世界で令嬢探偵になる。




 ダイアナはその時のことを思い出しているのか、手を押さえてかすかに震えている。



「すぐに医者を呼べばきっと助かったんでしょう。実際、最初はそうしようとしました。……でも、床に這いつくばって血を流す彼女は言ったんです。『その子どもを私に寄こせ。大事な金蔓だ。役立たずの使用人がこの私の役に立てるんだ、誇らしく思え』と」

「そんな……」

「言葉だけではなく、その様子も異常でした。あんなに血が流れているのに、まるで痛みを感じていないかのように笑って、目を爛々と輝かせて、私の足を驚くほどの強い力でつかむんです。……それが怖くて、ハサミはその場に捨て、息子を抱きかかえて外にでました。小屋の扉を閉めたら、向こうからはずっとうめき声が聞こえていました。でもとても助ける気にはなれなくて。……その声が聞こえなくなって、完全な静寂が訪れるまで、私はずっと扉が開かないように押さえていました」



 マルガリータの異常な様子というのは、間違いなく薬物の作用だろう。

 シエラは語り終えた彼女に掛けるべき言葉を見つけられず黙り込んだ。