「あの日も息子さんは同じようにダイアナさんのいない隙にハサミを持って遊んでいた。そこにマルガリータさんがやってきた。彼女も人に見られない急いでいたでしょうし、子どもだからと油断して、刃物に気が付いても取り上げなかったのでしょう」
シエラはそこで言葉を切って、ダイアナをまっすぐ見た。
「息子さんが誘拐されたことを私に隠していたのは、マルガリータさんの命を奪ったのがあの子だという事実を隠すため。ですが、息子さんの行動はあくまで自分の身を守るためのものですよね?正直に話そうとは思わなかったのですか?」
どう考えても、この件はマルガリータに非がある。とはいえ、たとえ本当のことを言ったとしても、男爵家はそれぐらい権力で揉み消してしまうだろうか。そうなると息子が罰せられるかもしれないと考えるのも自然ではある。
しかしダイアナが語ったのは、そんな予想とは少し違っていた。
「……私があの小屋に到着したとき、確かにマルガリータ様は既に血を流して倒れていました。でも──その時はまだ、彼女に息があったんです」



