「さて。まずはマルガリータさんが遺体で見つかった前日の出来事をお話しします」
シエラは探偵モードに切り替え、表情をきゅっと引き締める。
「あの日ダイアナさんは、何らかの用事──恐らく作ったレースの納品のため。普段からそうしていたように、息子さんを置いてほんの一瞬出かけていました。用事を済ませて帰って来た時ちょうど目撃したのでしょう。……息子さんが連れ去られる現場を」
それを見たダイアナは、もちろん近頃頻発している誘拐事件のことが頭をよぎったはずだ。
パニックになったダイアナは、近所の人にも聞こえるような声で叫びながら息子を探した。
そして少し落ち着いた頃、はっと気が付いたのだ。
息子を連れ去った者の容姿は、以前働いていた屋敷で自分をクビにしたマルガリータ・デマールにそっくりではなかったか、と。
「街はずれにあった例の小屋、あれはデマール家の所有物ですよね。一年前までデマール家に仕えていた貴女は、すぐにあの場所を思い出したのでしょう。息子さんを連れ去ったのが本当にマルガリータさんだったのかという確証はなかったでしょうし、本邸に乗り込むのは逆に捕まってしまう可能性が高い。だから、一筋の希望に賭けてあの小屋を見に行った」



