数分経った頃、シエラはおもむろに立ち上がった。そして、その控える使用人にこっそりと耳打ちした。
「あの、お手洗いをお借りしても?」
「承知いたしました。ご案内します」
「場所はわかるので大丈夫です! その、少しお腹の調子が悪くて……。し、失礼します!」
お腹の辺りを押さえながら、焦っている風に小走りでお手洗いのある方向へ行く。
できたらもう少し上品な言い訳を考えたかった。腹痛でお手洗いに走るのは伯爵令嬢的にいかがなものだろう。
だがとりあえず、これでしばらく戻らなくても怪しまれない。男性であれば特に、お手洗いまで様子を見に行くというのは憚られるであろう。
「えっと、マルガリータさんの部屋は……」
シエラはきょろきょろと周囲を見ながら、殺されたマルガリータの部屋らしき場所を探す。
ルシウスが男爵を足止めしている間に、男爵とマルガリータが薬物を使用していた証拠を見つける。それがシエラの使命だった。



