兄である男爵が不健康そうに痩せたというのも家の財政難による心労などではなく、恐らく薬の作用だ。

 五人の使用人を解雇し、税金や領地産の製品の値段を上げたにもかかわらずあれだけ苦しい生活をしているのは、今なお金を薬につぎ込んでいるからだろう。



「……なんて考えたんですけど……やっぱ違いますかね?」



 しっかりとした口調で語っていたシエラだが、ルシウスの変化しない表情を見ているうちに、自信はみるみる萎んでいった。

 実際にその薬らしきものを目にしたわけではないし、想像の域を出ないのだ。



「はあ。なるほど生まれ変わってきちんと推理をするようになったと感心していたのに、何故そこで自信を失うんですかねぇ。最後まで堂々としていないと台無しではありませんか」

「だって……」

「まあ良いでしょう。君の言うように彼らが薬物の類を使っていた可能性はあると思いますよ。この国の歴史を見ても、そういった薬で財政難に陥り身を滅ぼした貴族の例は一つや二つではありませんし」

「そうですよね!」