「……と、いう感じでした」



 デマール男爵の件を一通り語り終え、シエラはふうっと息をつく。

 静かに聞いていたルシウスは、それを見て首を傾げた。



「で?」

「え?『で?』とは」

「いやですから、それだけですか?犯人は特定できずじまいでした、と?」

「だ、だって無理じゃないですか?これだけじゃ何もわかりませんよ」



 シエラが言うと、ルシウスはあきれたように肩をすくめた。それからデマール男爵の調査書をシエラから取り上げる。



「何もわからない、というわけではないでしょう?マルガリータ・デマール殺害の犯人はわからずとも他に気付いたことはあった。だからこうして男爵家に繋がりのある人物について調べようとしていたのでは?」

「……」



 鋭い指摘にしばらく口を閉ざした。確かに、この件に関して気付いたことがある。ただしまだ証拠はない。探偵である自分が間違った推理を語れば信用が……。