「……つまり犯人は被害者の行動パターンを熟知していた人物。さらに罪をなすりつけるのに彼女を選ぶ動機があった。そう──」



 とある貴族の屋敷の一室。

 ある者は恐怖に冷や汗を流し、またある者は張り詰めた空気に息をすることを忘れていた。

 そんな中、凛とした声で堂々と話しているのは少女と呼んで差し支えないような若い女だった。


 緩く巻いたプラチナブロンドの髪を一つにまとめ、気品の溢れる深紅のワンピースに身を包んだ、いかにも貴族令嬢といった風貌。特徴的なのは、正義感の強い光が宿った淡い紫色の瞳。その双眸に見つめられた者は、それだけで全てを見抜かれているのではないかという錯覚に陥る。


 何人もの地位と権力のある大人たちに注目されているにもかかわらず、彼女は怖じ気づく様子もなく部屋を闊歩していた。

 そして、ある一人の人物の前で止まった。



「犯人はあなたですね、侯爵夫人」