出入り口のドアが開き、ふとそちらに視線を向ければ、見知った顔と目が合った。
 その人物も私に気づき、ニヤリと口角を上げてこちらに近づいてくる。


「今年もいた」

「不本意だよ。本当なら恋人とラブラブに過ごしてるはずなのに」

「はは。それは俺もだけど」


 綺麗な顔をして笑い、マフラーをはずしながら椅子に腰をかけたのは、男友達の菖人(あやと)だ。


柊里(しゅり)、なに飲んでんの?」

「クリスマス限定のシャンパンカクテルだって。……オシャレだよね」


 シャンパングラスの中には木苺がひとつ沈んでいて、クリスマスツリーに見立ててあるのか、ローズマリーが逆さまに豪快に刺さっている。
 個人的にはもう少しローズマリーは小さくていいんじゃないかと思う。大きすぎるから違和感があるのだ。
 首をかしげながら指でローズマリーを軽く持ち上げると、菖人は店員に見えないように口元を隠して笑った。


「まぁ、見た目的にはアリだな」

「うん、クリスマスっぽい」