「おっさんの写真ずーっと見つめて、何か楽しいか?」




なずなが横からにゅっと顔を出す。表情が少々呆れ気味だ。

「いや、その……」

「おっさん趣味ということにしといてやるか?私の彼氏、男色オジ専っつーことで。くっくっ……」

「んなわけ」

だが、俺の弁解を聞く間も無く、何故か失笑してなずなは向こうに行ってしまった。

今も「クックッ……」と、怪しく笑っている。一人で勝手にツボに入っちゃった。

今のどこが面白いの?自分の彼氏、男色オジ専だったら実際笑えないぞ?

ワケわからん。



今度はこっちが呆れながらも、でも。

そんななずなを見て、笑みが溢れてしまうのは何故だろうか。

それは、恐らくきっと。やっと戻ってきた尊い日常に対する安堵なのだろう。



……ここから、また。ゆっくりと再び動き出す。

君が傍にいることの幸せを噛み締める、毎日が。



おじさんの笑顔の写真を横目に、再び決意をする。



……おじさん、俺。幸せになるよ。

尊い日常と護りたいものがある、この世界で。