あなたに、キスのその先を。

「……あ、あの、私っ」

 何か言わないと、と口を開いたら、「言い訳はなしよ?」と先手を打たれてしまう。

 ロッカーに荷物を入れ終えた中本さんが、ツカツカと私の方へ近づいていらした。

「貴女、少しは自分の欲望に忠実になりなさいな。親や許婚(いいなずけ)の言いなりとか……結局は楽な方に流されてるだけでしょう? 欲しいものがあるなら踏ん張らなきゃ!」

 眼前にビシッ!と指先を突きつけられて、そう言われる。

「男はそう言う女の子に弱いみたいだけど……でもね、女だってちゃんと自分の気持ち、ハッキリしとかないと周りに都合のいいようにされちゃうんだからね?」

 中本さんはそれだけ言うと、くるりと(きびす)を返す。

 私はそんな中本さんの背中へ「ありがとうございます」とお礼を言った。
 以前、高橋さんにも同じようなことを言われたことがあるのを、思い出しながら。