あなたに、キスのその先を。

 これは……気をつけないと、うっかり「修太郎(しゅうたろう)さん」と呼びかけてしまいそう。その点、修太郎さんはそういうところの切り替えは(そつ)がない印象だから……私が気をつけてさえいれば安泰なんだろうな。

 そう思ったら、思わず

「……実は、図星です。どうしたらいいでしょう?」

 修太郎さんとのことを勘ぐられるよりはいいかな?と思って口早にそう言ってしまっていた。

 それに対して、高橋さんは間髪(かんぱつ)いれずに「いつも通りでいいっしょ?」と言ってくださって。
 その迷いのない答えに、思わず「え?」と聞き返したら、「だって酒の席でのことでしょ?」と言われて。
 そうですね、と小さくうなずいたら「だったら無礼講(ぶれいこう)だし相手も何も言ってきやしませんって。いつも通りおはようございまーす!って堂々と挨拶(あいさつ)してやりゃーいいんですよ」とにやりと笑いかけていらっしゃる。

「有難うございます、そうします!」

 高橋さんの笑顔に釣られて微笑みながら、私は下で偶然、彼と出会えたことに感謝した。

 修太郎さんにも、変に気負わずいつも通りでいこう。
 そう思えたから。

 でも――。