修太郎(しゅうたろう)さんにくっつくと、彼がつけている香水の香りが私にも移ってくる。
 身嗜(みだしな)みのひとつに香りまで取り入れておられる、そういう修太郎さんのお洒落(しゃれ)さに、私は大人の男性の色香を垣間見(かいまみ)てしまう。

「私、修太郎さんの香り、大好きです」
 ともすると、くさいと感じてしまうかもしれない香水を、修太郎さんはほんの少しふわっと香ってくる程度に抑えた上品な使い方をなさる。

 お仕事の日でも休日でも、何かの拍子に思い出したように漂ってくる、その柑橘系に近いような、ウッディーで大人なにおいに、私はいつもときめかされてしまう。

 香りと言うのは不思議なもので、目には見えないけれど確かにそこに存在していて……しかも凄く存在感がある。

「香水の話ですか?」
 腕の中に私を抱きしめたまま、修太郎さんが問いかけていらした。