ここで働き始めて今日で五日目。
 どうにかこうにか環境にも仕事にも少しずつ慣れてきた。

 初見で、異性だから仲良くなれそうにないと勝手に線引きをしていた道路整備推進係臨職(りんしょく)高橋(たかはし)(きよし)さんとも、実はとっても仲良くなれていたりする。

 高橋さんは私が来る一ヶ月前にこの課にいらっしゃったらしい。家業を継ぐための勉強がてらここで働いておられるという高橋さんは、とても目端(めはし)のきく方だった。
 先輩として本採(ほんさい)――公務員――の皆様をどうサポートしていったらいいか、どうすれば効率よく仕事がこなせるか、など様々なノウハウを懇切丁寧(こんせつていねい)に教えてくださる。

 年齢が私より数歳(いくつか)年上なだけと近いのと、仕事が出来る割にそれを鼻にかけないフレンドリーな性格が相まって、すぐに打ち解けることができた。

「高橋さん、この資料の()じ方なんですけど……」

 高橋さんと親しくなってからというもの、私は塚田(つかだ)さんの手をわずらわせたくなくて、高橋さんに聞けば分かりそうなことはそちらに聞くようになっていた。

 そのほうが、中本さんの心を変に逆なでしなくて済むし、何より私自身が塚田さんと接しているとどんどん彼に惹かれていきそうで怖かったから。