「あの、どうして急に……? 私、また何か悪いことをしてしまいましたかっ?」

 何が起こったのかよく分からなくて、無意識に修太郎(しゅうたろう)さんの背中に(すが)り付いたら、彼の背中が一瞬ピクッと跳ねた。

「本当に貴女って人は……」

 次いで、困ったように溜め息をつかれると、ゆっくり振り返って私をじっと見つめていらしてから、一度だけ軽く抱きしめてくださった。でもすぐに身体を離されて、
「……すみません、日織(ひおり)さん」

 そう言われて、再び距離を取られてしまった。

「修、太郎さん?」

 急に彼に拒絶されたみたいに感じて戸惑う私に、修太郎さんは「これ以上くっ付いていたら……その、僕が辛いので」と仰って。

「え?」
 修太郎さんのお言葉の意味が分からなくて、頓狂(とんきょう)な声をあげて彼を見詰めたら、修太郎さんは観念したようにひとつ大きく息を吐かれた。

「あなたに触れたくて……僕は結構我慢の限界なんです……」

 私は彼のその言葉に、ゆでだこのように真っ赤になってしまう。

「あ、あのっ、手を……手をつなぐのも……ダメ、ですか?」

 一生懸命考えて、そうご提案したら、修太郎さんが驚いたように瞳を見開かれた。