自分たちの係の島に着くと、塚田(つかだ)さんは私を彼の席のすぐ近くにある、綺麗に片付けられた机に導いた。

「ここが藤原(ふじわら)さんのデスクです。自由に使ってくださいね」

 周りのデスクには物が所狭しと積み上げられていて、天板(てんばん)がほとんど見えなかった。けれど、私にあてがわれたデスクの上だけは何も載っていなくて。

 キョロキョロと周りのデスクと見比べていたら、塚田さんに苦笑される。

「……突貫(とっかん)工事でそこだけ片付けたの、バレちゃいましたか?」

 頭をかきながらへらりと照れくさそうに笑う彼に、ドクンッと心臓が跳ね上がる。

(ダメ。これ以上好きになったら、後戻りできなくなってしまうのですっ)

 不意に彼が見せる笑顔がまぶしくて、胸が苦しくなる。

 私は自分が落ち込んでいたことを忘れてしまうくらい、彼の笑顔に引き込まれている自分に気が付いて怖くなった。