彼のために料理をするのは、セシリアにとっても楽しい時間だ。
 でも今日は、ララリのためにアレクを探そう。
「会議室、職員室、あとは……図書室とか?」
「そうだな。その辺りから探そう」
 ふたりとも新入生なので学園内は詳しくないが、授業が終わったばかりなので、まだ寮にも戻っていないはずだ。
 ふたりでいろいろな場所を探していると、ふと王女であるミルファーを見かけた。
 彼女なら、兄である王太子の居場所を知っているかもしれない。
 そう思って声をかけようとした。
 だが、ミルファーは急いで会議室に入っていく。
 用事があったのだろう。王女に話しかけることを諦めて、その場を立ち去ろうとした。
 そのとき、会議室の中から声がした。
「お兄様、ダニーに手紙を出したと聞きました。それは本当ですか?」
 ミルファーが話しかけていた相手は、探していたアレクのようだ。
 驚いたのは、その口調が今までのミルファーの印象とはかけ離れて、とてもきついものだったからだ。
「ああ。どうしているのか、様子が気になったから手紙を出した。父にも報告している」