「ねえ、獅夜くんいるよ……!」
廊下を歩いているだけなのに、案の定高良くんは生徒たちの視線を一身に集めていた。
「この時間帯に校舎にいるとか、初めてじゃない……!?」
「あんま見るなよ……目あったら殺されるらしいぜ」
男の子は畏怖の対象として、女の子たちはみんな目をハートにして高良くんを見ていた。
そして……。
「待って、隣の子誰!?」
「手繋いでるじゃん……獅夜くんって、女嫌いなんじゃなかったっけ!?」
そんな高良くんと手を繋いで歩いている私にも、嫌でも視線が集まっていた。
そういえば……高良くんは女嫌いだって噂があったんだった……。
それなのに、こんな地味な女と手を繋いでいたら、みんなが困惑するのも無理はない……。
何より、この状況に一番疑問を抱いているのは、私本人だから。