【完】溺愛したりない。〜獅夜くんは容赦ない〜

将来親父の仕事を継ぐことは決まっていたし、高卒認定さえ取ればいいと思っていたから。


胸糞悪くなり、その場から去ろうとした時だった。



「私は、その人のことを知りません」



女の綺麗な声に、思わず足を止める。

透き通るような、心地いい声だった。


俺は昔から女が嫌いで、甘ったるい声も甲高い声も、その全部が耳障りだったはずなのに……この女の声にはなぜか、嫌悪感を少しも覚えなかった。



「会ったこともないので、いい人かはわかりませんけど……悪い人かどうかも、わかりません」



さっき一瞬見えた女の姿は、絵に描いたような優等生だったから、そんなことを言うのが意外すぎた。

振り返って、教室の中を覗く。


はっきり見えた女の顔。



「先生がそんなふうに生徒のことを決めるつけるのは……良くないと思います」



担任をまっすぐ見つめる、メガネの奥の瞳を——綺麗だと思った。