「あの、私、やっぱり帰りますっ……」
そう言ってドアに手をかけたけど、高良くんの手が私の手を再び握った。
後ろから、逃げ道を塞ぐみたいに覆いかぶさってきた高良くん。
「待って。まーや」
耳元で囁かれて、動けなくなってしまう。
「頼むから、俺の話聞いて」
高良くんの、話……?
それは……彼女さんの、話、かな……?
「お願い」
「……」
どうしよう……聞きたく、ない。
今高良くんの口から恋人がいるって言われて、振られたら……立ち直れそうにない。
怖くて、目をぎゅっとつむる。
「まーや、誰かから俺に恋人がいるって聞いた?」
「……っ」
どうして、それを知ってるの……?
驚いて振り返ると、高良くんは空いているほうの手でスマホを取り出した。
そして、画面を私に向けてきた。
「これ見て」