【完】溺愛したりない。〜獅夜くんは容赦ない〜

こいつ……。近寄るなと言ったのに、何もわかってないらしい。

苛立って、いますぐに殴りかかってしまいたかったけど、そうもいかない。

俺は今……真綾に何か言う資格はないから。


真綾との距離が、少しずつ縮まっていく。

一瞬目があったけど、真綾はすぐに俺から視線を逸らしてしまった。


拒絶された気がして、息が詰まる。


押して引いても、ダメ、か……。

俺の横を、幼なじみとふたりで通り過ぎていった真綾。


もしかして、今はそいつと……。そんな考えが脳裏をよぎる。


真綾も隣にいることを許しているみたいだったし、本当はあいつのことが好きだったのかもしれない。

そんなふうに、悪い方向にしか考えられなくなってしまった。



「獅夜く~ん」



俺の腕に、自分の腕を絡めてきた女。俺は勢いよくその腕を振り払った。



「離せ」