岩尾くんは離すどころか、腕の力を強めた。

身をよじっても、非力な私は抜け出せそうにない。

強く押しても、岩尾くんの体はびくりともしなかった。


怖くて、涙がじわりと溢れる。

助けてっ……。




高良、くん……。



「まーやに近づくなって、言ったよな?」



——……え?


久しぶりに聞こえた声と同時に、岩尾くんが私から離れた。

地面に倒れている岩尾くんの心配を忘れるくらい、その人の姿に驚いた。



たから、くん……。



「どうして……」

「……まーや、来て」



高良くんは私の手を取って、歩き出した。

私は懐かしい手のぬくもりに、こらえていた涙が溢れ出した。


どうしていつも、助けに来てくれるんだろう。

高良くんの優しさが……今は痛いよ。


だけど、その手を振り払う気にはどうしてもなれなかった。