恋人がいるんですよね、なんて聞けない。
気まずくなることは目に見えているし、何より、高良くんの口から訳を聞きたくなかったから。
「ならよかった」
ほっと、安堵の表情を浮かべた高良くん。
高良くんといる時間が、こんなに苦しく感じるなんて……初めてだった。
その日は放課後になるまで、気を緩めたら涙が出そうだった。
自分が、こんなにも弱いなんて……。情けなくて、さらに惨めになる。
今日の補習が終わったら……もう、高良くんには近づかない。
彼女さんにも失礼だから、これでいいんだ。
私も……これ以上、高良くんのことを好きになりたくない。
「終わった」
いつものように、ものの数分でプリントを解き終わった高良くん。
ひとつずつ、丸付けをしていく。
「最後のプリントも満点です。おめでとうございます」