「可愛いな」
今、なんて言った……?
とても彼から発せられるとは思えない発言が、聞こえた気がする。
いや、幻聴に違いない。
こんなにもかっこいい人が、私のことを可愛いなんて血迷ったことを言うはずがないから。
私がうまく聞き取れなかったんだと思って首を傾げると、彼の綺麗な顔が近づいてきた。
気づいた時には、彼との距離が無くなっていて……つまり……。
——彼に、ファーストキスを奪われた。
あの後のことは、よく覚えてない。
彼が散らばったプリントを拾ってくれて、それを渡してくれて……何か言いたげな獅夜さんから逃げるように、職員室に向かった。
今でも、あれは夢だったのかなと思うけど……はっきりと覚えている唇の感触。
翌日、獅夜さんはいつも通り学校には来なかったし、あれ以来会ってはいないけど……できることなら会いたくない。

