結婚したら毎日言ってもらえるのかと思うと、それだけで幸せな気持ちになれた。

まだ恋人にすら昇格してないのに、気が早すぎると我ながら思う。



「ねえ、聞いた？獅夜くんと玉井さん付き合ってるらしいよ」



自販機のある角を曲がろうとした時、そんな会話が聞こえた。



「でも、玉井さんって岩尾くんと付き合ってるんじゃなかったっけ？」



……あ？

気にせず曲がろうとした俺の足を止めたその一言。



「有名だよね？」



真綾があの男と付き合ってる？

もちろん、それが事実と異なることはわかってるけど、そんな噂が流れていることが不快だった。



『怖い、です……』



あいつのことをどう思っているかと聞いた時の真綾の反応を思い出す。

確実に、トラウマを植え付けられるほどの何かがあったに違いない。完全に怯えていたし。