君に堕ちる



俺は父子家庭で育った。


俺が小1の頃


母親は浮気して家を出ていった。


『触らないでっ、雅なんていらない』


必至に引き止めようとする手を簡単に振りほどかれる。

そのまま俺に背を向け出ていった。


いや、いかないでっ、


嫌いでもいいから、


おいていかないでっ


ガチャン


扉の閉まる音がやけに響いた。


もう引きと止めようなんて思わなかった。