…ここにはいられないわね。 侍女が皆、下がり一人になった白蘭は天后宮には入らず飛び立った。 向かった先はいつの日か連れてきてもらった月影の宮だ。 ここは天宮から遠く離れている。侍女は誰も近づかない。 ここなら静かに過ごせるわ。 宮の主が離れたからか酷く寂しく見える。 中に足を踏み入れると、庭にある鈴蘭だけが綺麗に保たれていた。 そしてその庭には懐かしい人物がいた。 「兎月…?」 庭から見える二つの長い兎の耳。