「兎月!」 兎はもう何も話さなかった。 しかし兎月は白蘭をせかすように頭突きをした。 まるで簪を挿してもらったあの時のようだった。 早く行けって言っているのね…。 「兎月。私も大好きよ」 兎の毛皮を撫でると兎月は笑い、氷輪を助けるために牢に向かっていった。 それを見送った白蘭も天界を後にする。 …皇子宮に戻ることはもうない。 鬼神の父上と天女の母上の思い出の宮。 そして月影と私、兎月の思い出の宮。 その思い出と美しく咲く鈴蘭を残し紅蓮の元へ白蘭は向かった。