「紅蓮様。御父上の言葉はお忘れですか?」
「…」
その言葉に足を止めた。
「もうあなたは魔帝なのです。神籍簿でも魔帝・紅蓮の名を確認しました。戦でたしかに魔宮は壊滅的ですが魔都や民は皆無事なのです。その者たちを見捨てるのですか?」
『「…魔界を頼むぞ。紅蓮」』
そうだ私は亡き父上に任されたのだ、魔界を。
紅蓮は拳を握りしめると部屋に向き直り三人に言った。
「早急に魔帝即位の儀を行う。用意を頼む」
「「「はいっ」」」
三人は紅蓮の言った通りに即位に向け準備しに行った。
白蘭の行方を追いたい…だが、私はすでに魔帝だ。この魔界を背負う責任がある。
ため息をつき寝台に腰掛けると、枕元に何かがあるのを見つけた。
赤い鳳凰の羽だ。
「…白蘭」
殺されかけても紅蓮の心は恨みや復讐心に囚われることはなかった。
ただただ以前同様に、白蘭を愛していた。
彼女に会いたいと思っていた。
「必ず、会いに行く」
赤い羽を紅蓮は握りしめた。


