「白蘭です」
「なに?」
「白蘭が羅刹の元に行ったのです」
白蘭が…?
どういうことだ。私のことを刺したのも白蘭。助けたのも白蘭だというのか?
「紅蓮様が亡くなる直前、白蘭が皇太子宮へ来ました…白蘭は全てを知ったのです。月影の思惑も玲心の罪も。それから白蘭は羅刹のところへ…」
「それで白蘭は今どこに?」
「わかりません…」
「なぜ止めなかった!」
何と引き換えにしたのか…ここに現れないとなると相当の対価を払ったのだ。
朱雀の胸倉をつかみかかる紅蓮を雪梨が止めた。
「紅蓮様っ。おやめください」
「雪梨…」
「白蘭は自分の過ちに気づき、自分で考えて過ちを正すために行動したのです。大丈夫です。二千年のような現象はありませんから白蘭はまだ生きています」
「探しに行かねば…」
白蘭は生きている。でも…。
もし白蘭が対価として目を失っていたとしたら…。腕や足や翼を失っていたとしたら…。
そう思うと居てもたってもいられず皇太子宮を出ようとした。
するとまた雪梨が呼び止める。


