天空の姫Ⅲ ~二人の皇子に愛された娘~



「白蘭です」

「なに?」

「白蘭が羅刹の元に行ったのです」


白蘭が…?

どういうことだ。私のことを刺したのも白蘭。助けたのも白蘭だというのか?


「紅蓮様が亡くなる直前、白蘭が皇太子宮へ来ました…白蘭は全てを知ったのです。月影の思惑も玲心の罪も。それから白蘭は羅刹のところへ…」

「それで白蘭は今どこに?」

「わかりません…」

「なぜ止めなかった!」


何と引き換えにしたのか…ここに現れないとなると相当の対価を払ったのだ。

朱雀の胸倉をつかみかかる紅蓮を雪梨が止めた。


「紅蓮様っ。おやめください」

「雪梨…」

「白蘭は自分の過ちに気づき、自分で考えて過ちを正すために行動したのです。大丈夫です。二千年のような現象はありませんから白蘭はまだ生きています」

「探しに行かねば…」


白蘭は生きている。でも…。

もし白蘭が対価として目を失っていたとしたら…。腕や足や翼を失っていたとしたら…。

そう思うと居てもたってもいられず皇太子宮を出ようとした。

するとまた雪梨が呼び止める。