天空の姫Ⅲ ~二人の皇子に愛された娘~



「父上!!」


紅蓮は月影を放置しすぐさま父の元へ向かった。


…白蘭。敵討ちのつもりなのか。


理屈はわかるが、愛する人が親を殺すなど耐えられない。


月影も追おうとするが傷が深く、すぐには立てないようだった。


戦場を駆け抜け敵味方の屍を超え、鳳凰が落ちた宮に入ったとき、白蘭が魔帝に剣を振り上げているところだった。


「白蘭!…」

「紅蓮…」


白蘭はゆっくりこちらを向いた。


「白蘭…頼む。やめてくれ」


声を振り絞るように紅蓮は頼んだ。すると、白蘭の持っていた剣がするりと手のひらから離れ床に落ちた。