月影は自身の上着を脱ぐと白蘭に着せ、返事のない彼女を抱き上げた。
天帝宮に連れて行き座らせると傷だらけの足を蘇生術で治し両方の手で温めた。
「大丈夫か…?」
大丈夫なはずはない。
虹彩樹から戻ってきてから明らかに様子がおかしいのだから。
「眠れないのか?」
顔が疲れている。
心配そうに白蘭の顔を撫でる。
「気持ちはわかるが体を労わってくれ。そなたが今にも消えそうで心配だ」
「…どうしたらいいのかわからないの」
黙っていた白蘭がやっと言葉を口にした。
「色々な思いが重なって息苦しい…まるでずっと溺れているみたい…」
「白蘭…」
「忘れたいのに、忘れられない。眠ると夢に出てくるの。あの人が愛していると言いながら私の翼を斬り取るの…」


