「え?それって──」
「余計なこと言わなくていいから。打ち込み、再開して」
言葉の途中で道場の入口をぴしゃりと閉められてしまい。
今度こそ閉め出された流は、頭のなかにひとりの隊士を思い浮かべた。
ここに来てはじめて出会った人物。
大人の男なのに、まるで子供のように無邪気な笑顔を見せた。
土方から呑兵衛と言われるほどに酒を飲んでいた。
そうして、
ここにいてもいいと、最初に賛成してくれた────……永倉新八を。
「流ちゃん。ここにいたんやね」
「お千津さん」
呼ばれて振り返ると、そこには同じ女中のお千津が立っていた。
その手にはかごいっぱいの洗濯物が持たれている。
「いま手あいとる?」
はい、とうなずいた流を見て、お千津はほっとするような顔をした。
「悪いんやけど、これ干してきてくれやらん?うちは買い出しに行かへんといけんくて……」
「わかりました!やっておきますね。買い出し、お気をつけて」
「うん……おおきに」
洗濯物を受け取る際、なぜか一瞬だけ罪悪感をにじませた表情になったお千津。
流はふしぎに思いながらも、その後ろ姿を見送ったのだった。



