ばしん、と竹のしなる音が鳴り響く。


それは女中の仕事を終わらせて暇を持て余していた流が、かるい気持ちで道場をのぞいたのと同時だった。




「副長の姪っ子だ」


素振りをしていたひとりの隊士が流に気づいた。




────そうか。わたし、土方さんの姪っ子ってことになってるんだ。


流の力を知っているのは幹部だけ。


それ以外の隊士たちには流の能力はおろか、はじめは女であることも秘密にしておくつもりだった。

が、言ったそばから女であることがバレてしまい、流はここ、壬生浪士組屯所に常駐している女中として生活することになった。


しかし……女中として過ごすこと数日。

流を口説こうとする者が多数あらわれた。


普段から厳しい規律と稽古に神経をすり減らしている壬生浪の隊士。


そんな隊士たちの唯一の気晴らしは遊郭、もとい女だった。


口説くだけでは飽き足らず、むりやり部屋に連れ込まれそうになったときもある。