「どうしよう……」


流は困っていた。


眉を下げてオロオロしてばかりの流に、とうとう痺れを切らしたのか土方が書き物から顔をあげる。




「何がだ」

「あ、邪魔してごめんなさい……」

「何が、だ?」


そんなことはいいから早く言えといわんばかりの圧。


流は少し迷ったようにもじもじしたあと、ぽつりと呟いた。




「お風呂、に、入りたくて……」

「風呂?入ってくればいい」

「でも、その……」


いつまでも煮え切らない態度でいる流と、徹夜続きで仕事をしていた土方の相性は最悪だ。



周りにいい印象を与えたいと思わないから、無駄に笑顔を見せることはない。

場を和ませようと気遣いをすることもないし、優しい言葉をかけることもしない。


なによりも自分がそれを求めていないから。


だから、他人に対してそれをすることがないのだ。


今もこうして流のほうも見ず、仕事をさばきながら片手間に聞いている。