「はあ……っとに、あなたって人は…」
彼の意志が揺るがないことはきっと日常茶飯事なんだろう、と流はひそかに思った。
そのうち総司は息を吐いて、やれやれと肩をすくめる。
呆れた顔には少しではあるが、本来の穏やかさが戻りつつあった。
「お年を召してとうとう気でも狂ったんですね」
「そうかもな」
「きみもこの鬼の気が変わらないうちにどっか行きな。ばいばい元気でね。次は捕まるんじゃないよ」
そこでようやく流のほうに意識を向けた総司が、まるで犬でも追い払うようにしっしと手でやった。
流はこくりとうなずいて、立ちあがろうとしたときだった。
「総司」
土方の声に総司が若干面倒くさそうに反応する。
「まだなにか?」
「それは保護する」
腰を浮かしかけていた流の動きが止まった。
総司もぽかんと口をあけて停止する。
そのうち顔を押さえた総司が、くつくつと笑い、最後には勢いよく天を仰いだ。
「あっはっは!正気の沙汰じゃないね!」



