「食べられるのか?」
「いや、食べられないんですか? 大きいですし、切ったら所詮肉じゃないんですか?」
瑞葉の時に読んだ異世界モノの話では、おいしく調理されていた本などあったのだが、この世界では魔物を食べるという話を聞いたここはなかった。
家族に聞けばミアの耳に入り、私が記憶を戻したことがバレてしまう可能性があったので、今まで誰にも聞けずにいたのだが。
「魔物を食べるなど聞いたことはないが、令嬢の言う台詞ではないことは確かだな」
キースが若干引いている。確かに、魔物を食べると言うような貴族令嬢はいないだろう。
言った後、自分でも少し恥ずかしくなってきた。
「魔物なんて本でしか見たことないので、大きいし、もし食べられるのならば買い取りとか出来るだろうし、食糧難があった時も比較的にいいかなと思っただけです」
言い訳を言いながら、恥ずかしさのあまり、だんだん声が小さくなっていく。
「皮や鱗、爪などは加工して使えるが、確かに肉のことまでは考えたとこもなかったな。面白い発想だ。今度ギルドへ行った時に確認してみよう。食べてうまければ、儲けもんだ」
「いえ、でも言って恥をかくと……」
「恥なんて、かける時はかけておけばいいさ。それで解決出来る問題があるならば、安いもんだ。他にももっと変わった話があればいくらでも聞かせて欲しい」
こうやって話しているのは、やっぱり嫌いじゃない。
自分の知識とか、思いとか、そういうことを言い合うことがこんなにも楽しいなんて思ってもみなかった。