「これは、まだ内々の話だから誰かに言ってはいけないよ。知っているのは王宮でもごくわずかな人間だけだ。現国王が退位を願っていてね、そう遠くないうちにキース殿下が王位を継承をすることになるだろう。今はその調整段階で、国王が退位した後に混乱がないように、継承後すぐかまたは同時にキース殿下は婚姻をという形を取ることになるはずだ」

 現国王の体調不良は前々から貴族間では噂になっていた。

 しかも国王夫妻には子どもはいない。

 そうなれば、自然的に王位継承権第一位のキースが次期国王となる。

 次期宰相候補であるグレンが、常にサポートしているところを見ると、確かな現実味がある。

 しかし、問題はその先。

 王位継承の後すぐに婚姻ということは、キースと結婚する人間は自動的に次期王妃となるということだ。

「もしかして、私がキース様の婚約をお受けした場合」

「ソフィアが次期王妃ということだ」

「な、バ……」

 口を押え、言いかけた言葉を噤む。

 令嬢として言ってはいけない言葉が出かけてしまった。

 記憶を取り戻してから、どうも性格が瑞葉だった頃に引っ張られてしまっている気がする。

 ミアに気付かれないためにも、もっと慎重にならないと。