「これにしましょう」

 わたしはお嬢様の瞳の色と同じ、夜の空を思い浮かべるような深い青のドレスを取り出す。

 おそらくこの衣装棚の中で一番高価なものでしょう。

 お嬢様は知らないと思いますが、このドレスは侯爵様が一目ぼれしてお嬢様の為にお仕事先の国外にて購入されたものです。

 お嬢様の瞳の色によく似ていて、華奢な体系のお嬢様にはこのマーメイドラインにドレスはぴったりです。

「ふつ―のでいいんだけど。もっと、ワンピースみたいな」

「ダメです」

 お嬢様の趣味に付き合ってしまうと、わたしが怒られてしまいます。

「これで胸が綺麗に見えますからね」

 やや大粒のグリーントルマリンのような青みがかった緑のネックレスは、グレン様の瞳の色に似ているので、きっと喜ばれるはずでしょう。

「肩が凝りそうね」

「お嬢様はまたそんなこと言って。さあ、着替えますよ」

 着替えと化粧、そして髪のセットに小一時間費やした頃には、病み上がりのお嬢様はややぐったりとしたご様子でした。申し訳なさもあるのですが、今日は本番のようなものです。

 ここは頑張ってもらうしか、仕方ありません。お嬢様の髪をハーフアップにしてから髪は軽く巻けば、波打つ海のようの美しく、女神のようです。

「これで、微笑んで下されば、落ちない男などいませんからね」

 重い足取りのお嬢様に太鼓判を押し、お見送りいたしました。