お嬢様は、いつもドレスにしても地味な色合いのものばかり着たがります。

 そしてあまり欲がないのか、同じものを着まわしてみたりと、全然贅沢をしようとはしません。

 とてもお綺麗な方なので、何を着ても十分すぎるほど奇麗なのですが、着飾ればもっともっと、お綺麗なはずです。

 わたしは常日頃からもったいないと口酸っぱく言っているのですが、似合わないし、お金がもったいないと言って中々聞いて下さいません。

 しかし、今日ばかりはそうもいきません。なぜなら、奥様からもよく言われて来ているからです。

 奥様にこの前のグレン様との一連の話をしたところ、奥様も今日の主役はソフィアお嬢様だと確信していらっしゃるようで、必ずふさわしい恰好をさせてくるようにと言い使っています。

「お母様からも?」

 お嬢様はため息をつかれ、少し嫌そうな顔をなさりましたが、そんなこと気にしてはいられません。

 午前中のティータイムのお時間に、グレン様がお見えになるということなどで、あまりお時間がないのです。

「とにかく、着替えますよ」

 わたしはそれほど大きくないお嬢様の衣装棚を開け、ドレスを物色し始めた。普通の令嬢ならば、少なくともこの3倍くらいの大きさの衣装棚や宝石ケースを持っています。

 ミア様は3倍ではすまないと思うのですが。