「なに言っているのグレン、私たちは昨日婚約式を済ましてからここで缶詰めになっているのよ。その方が十分に可哀そうだと思わない?」
「それはキースの段取りが悪いせいじゃないかい?」
「おいおい、段取りを組むのはグレンの仕事だろ」
「その前にまず、人を増やすべきじゃない?」
「キースが選り好みしなければ、もっと人は簡単に増やせるんですよ」
「……結局俺に返ってくるのか」
あの壮大な姉妹喧嘩から、約半年が過ぎていた。
グレンとミアはあの後、身内だけですぐに質素な婚約式を行い、先月入籍をしたところだ。
結婚式も身近な人以外は呼ばずひっそりと行われたが、ウエディングドレスに身を包むミアは誰よりも幸せそうだった。
「それより、お父様ががっかりしていたわよ。グレンが子どもが生まれるまでは領地で過ごし、爵位も賜らないと言うもんだから。まだ引退できないのかって、ぶつぶつ言っているし」
「ミアの静養も兼ねて領地へ引っ込んだんだ。侯爵様には悪いが、まだしばらくはこっちには戻れないさ」