「ごめんなさい、グレン様」

「私もごめんなさい。あなたの孤独を見ようともしなかった。記憶が戻ってからも戻っていないフリをしていれば、瑞葉の時に出来なかったことをソフィアとしてやり直せると思ったの」


 私は後ろを振り返る。

 キースは前世の記憶がある私たちをどう思うのだろうか。

 普通ならば、ミアの言う通り私たちは異質だ。もし化け物と思われたら……。


「キース様、あの、私は……」

「どんなソフィアであろうと、俺が知っているソフィアは君一人だよ。過去に何があろうと、前世の記憶があろうと、そんなことはなんにも関係ないさ」


 差し伸べられた手を掴む。そう、私はもう何も手放したくはない。あの時あの手を掴んだのは、私だから。


「キース様、私のこと、愛してくれますか?」

「ん? もちろんだ。急に、どうしてそんなことを」

「私はキース様からの求婚をお受けいたします」

「ソフィア」

「その代わり、覚えておいでですか? 私とした約束のこと」

「約束? ソフィアまさか、あの日の」