私の抗議など全く意に介さず抱き上げたままキースは器用にドアを開け、進んでいく。
すれ違う騎士や侍女たちが、頭を下げながらも、何が起きたのかとやや怪訝そうな顔で見ている。
「キース様」
「恥ずかしいなら、何も見えないように顔を埋めてればいいんだよ」
「そういう問題ではないと思うんですが」
「ソフィアの願いなら、何でも聞いてやりたいが、これだけはダメだ」
「過保護すぎます」
「ああ、そうかもな」
抱きかかえた私の顔をキースが覗き込む。あまりの近距離に、私はキースの肩に顔を埋める。
「うん、それでいい」
心臓の音がこれ以上もなく耳に付く。
夜風は涼しいはずなのに、顔だけではなくキースに触れている全ての面が熱く感じた。
「ほら、ソフィア、馬車についたよ」
御者が開けた馬車に、キースは私を抱きかかえたまま乗り込む。
「もう着いたなら、おろして下さい」
「馬車は揺れて危ないから、ダメだ」