会話をするのが面倒で、チターゼは口を閉ざす。必要以上に人と関わり合いたくないのだ。関われば関わるほど、辛いことが待っていると身を持って知ったのだから。

ズキン、と頭に頭が走る。次に浮かんだ景色は、思い出したくもない最低最悪の記憶だ。血塗れになり、冷たく、動かない家族たち。泣き叫ぶ幼いチターゼ。雨の中行われた葬儀。親戚からの感情のない悔やみの言葉ーーー。

「……チターゼちゃん?」

気が付けば、エイモンに心配そうに見つめられていた。その距離はやけに近く、チターゼは慌てて距離を取る。

「ボウッとしてたけど大丈夫?具合でも悪い?」

「何でもありません!」

チターゼはそう言い、エイモンに背中を向けて走り去る。そして予約した部屋に入り、鍵をかけてその場に座り込んだ。

「ほんっと腹が立つ……」

群れ合う人、群れようとする人を見ると苛立ってしまう。それと同時にほんと少しだけある気持ちが心に浮かぶ。それに苛ついて、チターゼは地面を殴り付けた。