「なぁん」

猫が立ち止まったのは、チターゼが泊まっている部屋の前だった。そしてイヅナに駆け寄り、早く開けろと急かす。

「チターゼさんに何かあったの?」

イヅナは震える手でドアにあるベルを鳴らす。しかし、チターゼが起きている気配はない。

「チ、チターゼさん、大丈夫ですか?」

イヅナがドアノブに手をかけると、鍵は空いていた。そのままゆっくりとドアを開けると、普段嗅ぐことのない異臭が鼻を刺す。この臭いをイヅナは知っている。だからこそ、目は大きく開き、体の震えが止まらなかった。

「チターゼさん?」

部屋にチターゼはいなかった。しかし、チターゼが眠っていたであろう布団は血まみれで、チターゼが使っている武器である剣にも血が大量に付着し、床に転がっている。

「ッ!エイモンさんたちを呼んできて!!」

イヅナがそう言うと、猫は「なぁん」と鳴いて部屋の外に出て行く。その様子を見つめながら、イヅナは体の震えが止まらなかった。