あやかし戦記 愛ゆえの選択

一階には、大浴場やレストラン、ゲームなどを楽しむ部屋など多くの部屋がある。その中の一つに、お茶とお菓子を楽しむための茶房があった。

その前を通りかかった時、偶然にも全員のお腹が鳴る。昼食を取るのをすっかり忘れていたのだ。

「せっかくだし、食べて行きませんか?」

ヴィンセントの提案に、イヅナとエイモンは反対することはなかった。異国のお菓子はどのようなものがあるのか、とても気になってしまう。

牡丹の花が描かれた暖簾をイヅナがくぐると、アンティーク調のもので統一されたカウンター席やお座敷が現れる。窓からは美しい花や木々がある中庭が見え、日常の疲れが癒やされていく空間だ。

「いらっしゃいませ〜!」

制服を着た従業員が挨拶をする。その店員の方を見た時、「えっ……」とヴィンセントが呟いていた。イヅナも予想外のことに驚いている。

「本当に来てくれたんだ。嬉しい!」

そう言って目の前で笑っているのは、イヅナのもう一人の幼なじみのレオナードである。制服を着こなし、注文票を手にして、茶房のスタッフになりきっていた。