「おいしい?よかったら、僕の一口あげる」

ヴィンセントが頬を赤くしながら微笑み、自身が食べているクレープを差し出す。自分で買ったクレープを頬張っていたイヅナは、「いいの!?」と目を輝かせる。

「んっ、こっちもおいしいわね!」

ヴィンセントの食べていたクレープを一口貰い、イヅナは笑う。クレープのおいしさに浸っているイヅナは、間接キスをしてしまっていることに気付いていない。ヴィンセントはただ顔を赤くしている。

「よかったら、私のも食べる?」

「えっ、いいの?」

間接キス、そうわかっていながらもヴィンセントはクレープを食べて喜びと恥じらいに胸を膨らませる。イヅナはその横でのんびりとクレープを食べていた。

多くの人が楽しみ、平和な日常の中にいると、アレス騎士団の一員として妖と戦っている日々がまるで夢のように感じてしまう。今日は二人とも久々に私服姿なので、尚更だ。

「イヅナ、朝から思ってたけどその服可愛いね」

ヴィンセントに服を褒められ、イヅナは「ありがとう。ヴィンセントもかっこいいわよ」と笑顔になる。服などを褒めてもらえると嬉しいものだ。もう一人の幼なじみであるレオナード・ロマーナはヴィンセントのように褒めてくれないため、嬉しさは大きい。